足助2路線に乗る 清流と廃線跡 名古屋から近い“秘境”バス

バス
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古い町並みと紅葉の名所香嵐渓こうらんけいを持つ愛知県・足助あすけ
目的も計画もなくふらりと降り立った駅から足助方面へ向かう路線バスに乗ってみた。

鉄道のもっと奥へ さなげ・足助線

猿投駅
やってきた猿投さなげ。暑い。梅雨の合間ぐらいに思っていたら日差しが突き刺さる。
「三河辺りかなあ」と大雑把に考えた程度に何の計画も立てないでふらりと名鉄三河線の普通列車に飛び乗って端までやってきてしまった。

三河線はこの先の西中金まで伸びていた。盲腸線の先を切っても盲腸線。この先も予定のない旅をしようとすれば戻るか鉄道以外しか選択肢はなくなる。列車内アナウンスもあった西中金・足助方面のバスに乗るのが順当か。

猿投駅バス停
少し広く感じる駅前広場を見渡すとバス停があった。方面別でわかりやすい。「とよたおいでんバス」広瀬・香嵐渓方面。つまり西中金・足助方面。今度の便は約40分後。足助は東岡崎に出る路線があるから回れるし、面白そうだから待ってでも乗ることにする。

時間が止まったような静かでのどかな駅前だが、15分に1本列車が着くたびにそこそこまとまった人が降りてくる。バス停は待ち客数人となった。

百年草行き
「(香嵐渓)百年草」と行き先表示を出した小さなバスが何分遅れかでやってきた。路線名は「さなげ・足助線」。バス停の路線図によると豊田厚生病院から浄水駅、愛環四郷駅、猿投駅、広瀬、西中金、香嵐渓、足助を経由して百年草に至る。大雑把に言えば浄水・足助間の路線。結構な広範囲だが今や全部豊田市内なのもすごい。豊田ではないのは車種だけ。おそらく代車であろう白一色のバスにmanacaをタッチして乗り込む。わずかな座席は全部埋まった。

猿投駅を発車後ほどなくして緑が多くなり、低い山の間、小さな集落を繋ぐように走る。なるほど三河線廃止区間は山間路線だったのだ。「広瀬やな」の看板がみえる。このバスは地下鉄直通列車のある駅を通るから、この愛知県、都会と清流は意外と近い。

西中金

広瀬を過ぎると集落内の狭隘かつ急坂を登りだした。小さな車体に納得。集落に入り込む感じは鉄道では味わえないから楽しい。広瀬は三河広瀬駅跡の広場で廃駅後も集落の中心となっていると見た。上下双方のバスが同じ広場に入り込むのはまるで列車交換を見ているようだ。西中金も明らかに線路跡とわかる架線柱が残された築堤が見えるし、ホームも駅舎も残されている。死んでも愛されている三河線末端部。それを車窓から眺められる贅沢。

ところで車内の客層はといえば、土休日であり普段乗らないような雰囲気の客もいる。よくあるコミュニティバスの議論では「自家用車に乗る人」、「自家用車に乗れない人」と区分けをしがち。小銭や「チャージの余り」で気軽に利用できる公共交通機関があることは誰にとっても便利なことだ。

そして、足助追分という停留所アナウンスで足助地区に入ることを知らされる。森に挟まれた川だ。川の中には足を水に浸けながら釣りをしている人がいる。渓流釣りだ。水が透明だ。なるほど足助は渓谷の町なのか。
足助大橋から

香嵐渓が旧足助町にあることは知っていたが、香嵐渓と足助の町の距離感がわからなかった。今回このバスに乗ることによって同じ場所にあることを知る。

香嵐渓
名勝・香嵐渓をいとも簡単に通過し、足助の町でいくつかの停留所を通り、足助に到着。ここで降りる。名鉄足助バスセンター。結構晴れてきて青空と山の緑、停まっている名鉄バスの赤のコントラストが鮮やかだ。路線図をよく見たら東岡崎に出る名鉄バス路線の始発地であることは間違いないが、他の停留所でもよかったようだ。でも時刻表を見たら適度な乗り換え時間となっていた。客のことがわかっているではないか。ターミナルから乗るほうがわかりやすいし、使いやすい。こちらとしても足助の町を二度通るのは歓迎だ。

バスセンターで見ていると自家用車で乗り付けてくる客も2名ほどいて、もっと“奥地”があることを教えられた気分だ。山間と言えどここからわずか1回乗り換えで名古屋都心だから侮れない。交通の要衝なのは戦国時代から変わらないということか。

意外な景色を見せる岡崎・足助線

名鉄バス

さて、今度は名鉄バスの東岡崎行き。バスセンターの敷地中央に停まっている1台の大型バス。他にないから多分あれだろう。他の客が停留所標識ではなくバスの方に向かったから後から距離をおいてゆっくり付いて行ってみる。行き先表示が「[8]岩津 康生町 名鉄東岡崎駅」に変わり、運転士のアナウンスとともにドアが開いた。田舎は暗黙の了解があるからやっかいだ。

路線名「岡崎・足助線」。岡崎側は主要駅である名鉄名古屋本線東岡崎駅がターミナルとなっている。予備知識はそれだけ。名古屋界隈に帰れれば十分。そんな気持ちで乗り込む。足助の町を先ほどのおいでんバスとほぼ同じ経路で戻る。

そう思ったのも束の間。集落から外れ、渓谷沿いの道に入った。建物が見えず、低くとも山の森に囲まれた渓谷だ。秘境感満載。そこを先ほどとは違う大型路線バスで走っているのだ。幹線的な路線だと景色も“幹線的”なのではないかとばかり思い込んでいた。「コミュニティバスの方が田舎」の先入観をみごと破壊される。

渓谷を行く

名鉄バス、渓谷を行く。

則定で渓谷と別れると今度は緑の森の中を進み出す。森林浴路線でもあった。(※後で地図を確認すると巴川と並行していることは同じ)

三菱自動車EV技術センター辺りまで来ると山が見えなくなり、平地の郊外を長々と走る。ありふれた郊外路線バスの雰囲気となった。そして、気がついたら岡崎市街に入っていて、康生町こうせいちょうを経由。先月訪れた岐阜と比べて控えめな賑わいながら、「岡」が付く都市だけあってか平らで広々として堂々とした印象を受ける。

橋を渡ると無線の音声が運転席の方から聴こえてきた。ターミナルが近い。1960年代で時間が止まったような「岡ビル百貨店」を擁する東岡崎駅北口のバスターミナルに先頭から突っ込んで東岡崎終着。山間部では数人しか乗車していなかったが、最終的にはそれなりに乗っていた。
岡崎・足助線(東岡崎)

全線約70分。実に乗りごたえある路線だった。名古屋界隈からふらりと訪れて手軽に“秘境”を味わえるとは思わなかった。

足助方面ルート図

知らない土地で知らないバスに乗るということはとても新鮮な体験だ。景色もさることながら渓谷沿いの小さな集落で中学生が降りたりするのを見ていると平地育ちとしてはこうした山間にも人々の暮らしがあるのだと実感する。よそ者なのにもかかわらず“地元の人と同じ空気”を吸うことができる。だからローカルバスはやめられない。

※動画は近日変更します

おいでん!足助方面バス 渓谷沿い“秘境”に驚き

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